
食育とは
みなさん『食育』という言葉をご存知ですか、今はやりの作り言葉だと思いますか。なかなかどうして由緒正しき言葉で、遠く明治の時代からあったそうです。1898年明治31年、石塚左玄(後に食養医療の祖と言われる)という人物が、通俗食物養生法という書物の中で「体育も知育も才育も全て食育にあると認識すべき」と述べています。
平成17年6月17日食育基本法が公布され、7月15日より施行されました。ここでは「国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現・食文化の継承・健康の確保などが図れるよう自らが『食』について考える習慣や知識などを楽しく学習すること」と謳われています。そして、毎年6月を食育月間、19日を食育の日と制定し、各地で様々の催し物を開催しております。
当然のことですが『食』、食べるとということは口から食べ物を取りこみ栄養とする行為ですが、それだけではなく人は食物を味わい、食材や料理方について語らいあるいは食卓を囲み団欒を取るなど、心の糧としています。この様な観点から日本歯科医師会他4団体では6月4日、『食育推進宣言』を発しました。
1.「食べ方」を通して、生涯にわたって安全で快適な食生活を営むことを目的とした食育を推進する。
2.あらゆる場と機会を通して、口の健康を守り五感で味わえる食べ方ができる食育を推進する。
さて、みなさんは『ひみこの歯がいーぜ』という言葉をご存知ですか?もちろん語呂合わせです。噛む(咀嚼)ことの効能を説いた言葉です。
ひ:肥満防止 |
食べ物を良く噛むことで、食品に含まれるデンプンの消化吸収は早まり、血糖値の上昇が早くなり満腹中枢を刺激し、ダラダラ食いを防止する。 |
み:味覚の発達 |
唾液には味覚神経を敏感にする物質が含まれています。噛むことにより、多くの唾液が分泌され、その結果味が引き立つようになります。また、噛むことにより、食材の持つ化学的因子(うまみ因子)や物理的因子(硬さ、軟らかさ、粘性など)を味わうことができ味覚が発達します。 |
こ:言葉の発音がはっきりする |
顎の成長発育などに関係します。よく噛むことで顎はよく発育し、その結果、歯並びが悪くなることは少なくなります。するとむし歯にもなりにくく歯槽膿漏にもなりにくくなります。また、顔面の筋肉、特に表情筋は発達し口元も美しくなり、総じて言語も明瞭となります。 |
の:脳の発達 |
よく噛むことで、脳の血流量は上昇し脳の活動が活発化します。『ひ』と同じことですが、噛むことにより血糖値が上がり、記憶がよみがえります。 |
は:歯の病気の予防 |
きれいな歯並びは、むし歯や歯槽膿漏になりにくくなります。 |
が:がんの予防 |
唾液には、発がん物質を減弱させる酵素が含まれています。この他にも細菌に抵抗・抑制する作用、歯を強くする作用などたくさんの効能があります。 |
い:胃腸快調 |
噛むことにより、食品はそれだけ粉砕され胃腸にかかる負担が少なくなります。また、消化液の分泌を高めます。 |
ぜ:全力投球(瞬発力発揮) |
咀嚼能力(よく噛める)がUPするということは、体力向上につながります。また、奥歯に力が入ることは瞬発力を高めます。脳に十分な栄養源(ブドウ糖)が供給されることにより集中力などが高まります。 |
普段意識せず行なっている噛む(咀嚼)という動作を学問的に考えると、運動生理学、神経生理学、あるいは精神生理学など多方面から分析できます。
私たち歯科医師の立場から言いますと、健康で、おいしく食べられるのには、じょうぶな歯・健康な歯ぐきがなによりも大事です。そのためには治療はもちろんですが、定期検診をしてお口の健康状態をたもつことに勝るものはありません。