フッ化物で再石灰化
「う蝕」と「歯周疾患」に関する「組織学的」「病理学的」「細菌学的」研究の進歩は目覚ましく、両者がともに一種の感染症であることは、古い教科書の概念にはありませんでした。
これからは、口腔衛生学の新しい潮流を常に取り入れた予防処置を積極的に行う必要があります。
(う蝕=むし歯)
我が国の口腔衛生学では「う蝕」に関する教科書の書き換えが遅れていますが、ハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトに変換すると「う蝕」が予防できる、という説明はもう既に過去のものです。
今日では様々な実験データに基づき、フッ化物によるフルオルアパタイトにより歯質の耐酸性が向上し、「う蝕」が予防できるという理論から、口腔内に微量存在するフッ化物イオンにより歯質の「再石灰化」が促進されて、「う蝕」が予防できるという再石灰化促進理論へ四半世紀をかけて大きく変換しました。
「う蝕細菌学」においても同様の変換がおこなわれています。
ミュータンス菌が乳酸を産生した結果、phが低下して「う蝕」になるという有機酸の産生を重視した理論から、複数の細菌群が歯面に強固なバイオフィルムを形成し、バイオフィルム中に有機酸が封じ込められるというバイオフィルム感染症の概念に根本的に変換しています。
(The quintessenceからの引用)
「脱灰」
食事などをするとプラーク中のむし歯菌などの影響で、pHが酸性に傾き、ある程度の酸性まで進むと、エナメル質の表面が溶ける「脱灰」が起こります。
これは目で確認することができないほどわずかですが、確実に食事のたびに繰り返されています。
「再石灰化」
しかしすぐに唾液によって修復が始まります。
唾液には、酸性やアルカリ性などに傾いた状態を中性に戻す「緩衝作用」という働きがあります。
エナメル質が溶けるまで酸性に傾いたプラークも、しばらくすると元の中性に戻ります。さらに唾液中の成分が溶けたエナメル質の修復を行う「再石灰化」が行われます。
「再石灰化」では、溶かされた歯の表面のエナメル質を、ただ元に戻すのではなく、結晶構造を変化させて、溶ける前の歯よりも硬くて虫歯に強いエナメル質に変化させることが出来ます。
生えたての永久歯が、柔らかく虫歯になりやすいのは、この「再石灰化」がほとんど行なわれていないためと言われています。
歯の「再石灰化」には次のようなものが役立ちます。
「唾液」
「再石灰化」の主役です。就寝前の飲食が虫歯の原因になるのは、就寝中は唾液の少なくなり、「再石灰化」がほとんど行なわれないためと考えられています。
「キシリトールガム」など
キシリトールガムを噛むと酸性に傾きにくくなります。
またガムを食べることで、唾液の分泌が増し、「再石灰化」にも効果があると考えられます。
「フッ素入り歯磨き粉」など
微量のフッ素は、「再石灰化」を加速します。
この「再石灰化」で修復される量は目で確認が困難なほど、ごく僅かな量です。したがって修復が困難にならないように出来るだけ「脱灰」が少なくなるように、しっかりと歯磨きを行なわなければならないのは、言うまでもありません。
過去の記事
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「北海道でフッ化物洗口が行われている地域をご紹介します」
「フッ化物&シーラントで最強!!」
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